6月28日 いちご離れ

26日日経夕刊「あすへの話題」は俳人黛まどかさんの最後の連載でした。岩手のある集落の話として7月初旬村人が山に入るとこの季節母熊が子熊に野苺を食べさせに来る。熊の子離れの時期で、母熊は子熊が野苺を食べている間に、そっと離れる。二度と会えないことを承知で、子熊を残していく母熊の思いはいかなるものだろう。子熊が気が付いた時には母熊はいない。甘い野苺は親子を断ち切るための手段であり親から子への最後のギフトでもある。厳しい自然界の営みに人の世にも通じる親子の情愛を感じ村人は「いちご離れ」と呼ぶようになったという言い伝えを引きながら同じく俳人で昨秋亡くなった父親との別れを述べます。父親にはその病状を隠していたが気づかぬはずはなくウイットのある会話、作句、日々感謝の言葉で最後の瞬間まで父らしく生き切った。気づいていなかったのは私の方だったのだ。今にして思う。あれは「いちご離れ」だったのだと。と結ぶ。