今月のラジオポワロ
お米の価格と米農家事情
5月21日配信の松戸ベジフル倶楽部第129回では、「お米の値段について」というテーマで、野菜ソムリエプロであり、あじさいねぎ農家の番組パーソナリティ成嶋伸隆さんがお話をされています。
まず、お米には2つの流通経路があります。一つが「政府管理米」でJAが代行して全量を買い上げます。令和6年度は玄米60kgあたり約2万円です(令和3年くらいまでは約1万2000円でした)。そしてもう一つは「自由流通米」で、生産者が直接、卸業者や消費者に販売するもので、JAも自主流通米を購入していて、この自主流通米の4割がJAグループに流れています。
お米がない! どこにお米が? と騒がれますが、「お米はあるんです!」と成嶋さん。お米の半分は流通大手や小売店に行きます。コロナ禍のマスクを思い出すと同じことで、消費者が買いあさるため、小売店・卸問屋がコメが不足している体(てい)で値段を上げるというのがカラクリ。本当にお米がなかったら、外食産業が営業し続けることができなくなります。メディアが煽(あお)るのも原因の一つだということです。
お米の生産コストは農林水産省によると、令和4年産においては玄米60kgあたり1万5273円でしたが、ウクライナ紛争から肥料・農薬・機械・資材が高騰し、雇用している人件費の上昇、ガソリンも高騰、すべてのコストが上がっているのが現状です。
そもそもお米農家の76%が兼業農家だそうです。つまり、他に仕事をしているということです。その理由として、お米農家はお金にならないから。例えば平均耕作面積が3ha(東京ドームの7割ぐらいの面積)でのお米の生産量は約1万2600kgとなり、買取価格が60kgあたり2万円だとすると、420万円の売り上げになりますが、そこから60kg生産するためにかかるコスト1万5000円、総額315万円を差し引くと、利益は105万円程にしかならず、さらに所得税も引かれると…。だから、よそへ働きに出なければならないのです。
ではなぜ、米農家を続けなければならないのか? という疑問が生じます。それは、農家にいまだに残る村意識、田んぼを荒らしたら周りの農家に迷惑をかける、先祖代々の田んぼを手放し農家を辞めたら周囲の農家に馬鹿にされる…ということが原因と言われます。しかし、今の農家の子どもはこのような意識はなく、また親も継がせる気もないので、近い将来お米が今以上に貴重になる、と成嶋さんは言います。
比較的経営が安定している大規模農家を、補助金を支給して育成するという動きもあるが、田んぼを貸してくれる農家が大規模化するほどは集まらない、または田んぼが点在してしまい効率が悪くなるという事実もあります。また補助金を得るには売り上げノルマなどがあり、自然相手の農業ではリスクも伴うため、補助金を受け取るにも勇気と覚悟が必要となるそうです。
われわれ日本人が主食たるお米の自給率を維持するため、ちょっとした嗜好品は我慢し、お米を購入してほしいと成嶋さんは訴えます。
農林水産大臣が失言により辞職しました。後任の大臣には、米農家さんがお米を作り続けることができるような、そして日本人が今までのように手軽にお米を食べ続けられるような政策を打ち出してほしいものですね。
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成嶋伸隆さん