web松戸よみうり / 日曜日に観たいこの一本 / 第893号（2024年1月14日）

日曜日に観たいこの１本
グランツーリスモ

by matsuyomi · 2024年1月14日

　実話の映画化というから驚く。プレイステーション（ソニー・コンピュータエンタテインメント）と日産という日本の企業が舞台なのに、なぜもっと話題にならなかったのだろう。
　大学を中退して、毎日ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に夢中になっているヤンに、元プロサッカー選手の父親は残念な思いを抱いていた。そんなヤンにビッグチャンスが訪れる。世界中から集められた「グランツーリスモ」のトッププレイヤーたちを、本物の国際カーレースに出場するプロレーサーとして育成するため、競い合わせて選抜するプログラム「ＧＴアカデミー」に参加できることになったのだ。プレイヤーの並外れた才能と可能性を信じて、日産に企画を持ち掛け「ＧＴアカデミー」を立ち上げたダニー。
　ゲーマーなんかが通用する甘い世界ではないと思いながらも指導を引き受ける元レーサーのジャックは、彼らを厳しく育てる。
　「ＧＴアカデミー」を優秀な成績で卒業したヤンは実際のレースに出場。プロのレーサーを相手に激しいバトルを展開する。レーシングカーや世界のサーキットを精密にシュミレートして開発された「グランツーリスモ」で、何千回もレースをしてきたヤンはコースを熟知している。
　「シムレーサー」（ゲーム上のレーサー）をバカにしているライバルチームの露骨な妨害も実話なのか、それとも、さすがにここは演出なのかは分からないが、ヤンはやがて大きな試練に巻き込まれる。
　物語の軸になるのは、ヤンと父親の関係。父親は心の底では、ヤンに好きな道で頑張ってほしいと願っているのに、それをうまく伝えられないでいた。父親は黒人で、母親は白人。ヨーロッパの文化であるカーレースの世界では、（日本人も含めて）有色人種は異色の存在だ。そして、ヤンを指導する元レーサーのジャックは、ある苦い経験からレーサーを辞め、メカニックに転向していた。本物のレースの恐さを知る彼の言葉には、厳しさの中に愛情がある。
　実際のレースシーンは本物のヤン本人がスタントを務めたという。後半のレースシーンの音と映像には迫力がある。監督は「第９地区」のニール・ブロムカンプ。
　【戸田　照朗】
　監督・製作＝ニール・ブロムカンプ／出演＝アーチー・マデクウィ、デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム／２０２３年、アメリカ
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　「グランツーリスモ」、ブルーレイ＆ＤＶＤセット税込５２８０円、４Ｋ　ＵＬＴＲＡ　ＨＤ＆ブルーレイセット税込７４８０円、発売・販売元＝ソニー・ピクチャーズエンタテインメント