新市長に松戸隆政氏
3日に初登庁、難題解決に意欲
本郷谷健次前市長の退任に伴い6月1日に行われた松戸市長選挙で、元県議の松戸隆政氏が初当選。松戸氏は4万6295票を獲得。次点は4万895票を獲得した元副市長の小玉典彦氏だった。小玉氏は18日の市議会で再び副市長に選出され、松戸氏とともに市政の運営を担うことになった。3日には、松戸新市長の初登庁と記者会見が行われた。これに先立ち、5月30日には本郷谷前市長の退庁式が行われた。【戸田 照朗】

初登庁する松戸隆政市長(左)
松戸新市長の経歴
幹部職員を前に行われた登庁式で、松戸市長は次のように自己紹介した。
大橋でラーメン屋を営む両親のもとに生まれ、大橋小学校、早稲田大学を卒業後、東京大学大学院で経済政策を学んだ。大和証券SMBCという投資銀行でM&Aや企業再生に従事。足利銀行が破綻した際に栃木県経済が疲弊した時期があったが、再生ファンドを立ち上げて、企業、地域の再生に従事した。資本主義の最前線でスピード感を持って、チャレンジをするといった仕事に従事していた。32歳の時に地元の松戸市、千葉県を良くしたいという思いから立候補し、千葉県議会議員に初当選した。選挙は2011年4月に行われたが、東日本大震災のちょうど1か月後の統一地方選挙だった。妻の実家が宮城県石巻市で、義理の父は市役所の職員で市立病院の病院局長だったことから、津波で流された病院で、復旧・復興で大変だったという話や、市役所の職員が体を張って復旧・復興に取り組んだという話も聞いている。住民の命と暮らしを守るのは市の職員の大事な役割だということを認識している。県議に当選した後は、防災をメインに取り組んできた。4期14年務めた後、松戸市長選に立候補し、当選した。
スピード感のある市政
本郷谷市政が子育てに注力し、全国でもトップレベルになったことは認識している。人口が50万人に到達し、全国でも20位以内に入る人口規模になった。私が生まれた昭和53年は人口38万人で、そこから12万人増えた。大都市になったと言っても過言ではない。
市長選を戦う中で、市民から多くの意見を頂いた。便利で大きなまちである一方、駅前の賑わいがなく、市内を歩けば空き家、シャッター通りも増えた。特色が発揮できていない。「松戸市ってどこ?」と言われることも多々ある。近隣の流山や柏といった自治体にも勢いで負けているんじゃないかといった厳しいご意見を日々いただいた。松戸市には大きなポテンシャルがあると確信している。松戸市の自然や、歴史といった資源、東京からのアクセスの良さや、様々なインフラ。多くの市民がこのまちに住み、暮らし、様々な活動をしている。ひとりひとりの話を聞くと、松戸市が好きで、松戸市に対する思いを持って、様々なスキル、能力をもって活動されている方も本当に多い。現状維持の中で地盤沈下をしているのではないかと言われているが、50万市民の思いやスキルを結集していければ、まだV字回復は可能だと確信している。
スピード感のある、チャレンジをする、市民に見える市政、変わったと実感していただけるような市政にしていきたいと、公約で5つの柱を訴えさせていただいた。例えば、市役所の移転、松戸市総合医療センターの再生、命と生活を守る防災・減災の取り組みなどの公約を提言させていただいたが、その公約を実現し、変わった、良くなったと思えるような松戸市政を実現するためには、職員の力が必要不可欠だと思っている。
私からお願いしたい取り組みとしては、まず1つ目は、チャレンジをする姿勢を貫いてほしい。松戸市だけではなくて、全国の自治体では人口減少や少子高齢化、インフラの老朽化など厳しい状況が続いている。現状維持は地盤沈下につながる。新しい取り組みに対して、積極的に進めてほしい。失敗を恐れずに挑戦をする姿勢はしっかりと評価していきたいと思っている。ロジックにもとづいて、論理的にしっかりしたチャレンジ精神をもって取り組んでいただきたい。その中で、たとえ失敗をしたとしても、それを私は評価するし、その失敗に関しては、私がしっかりと責任を負っていきたい、矢面に立っていきたいと思うので、チャレンジ精神を持った市政運営、行政運営をお願いしたいと思っている。
2つ目は、スピード感を持った行政運営だと思っている。松戸市に関しても、人口減少、少子高齢化、インフラ老朽化など、本当に問題が山積している状況。1分1秒、予断を許さない状況の中で市政を迅速に進めていかなければいけない。タイムマネジメントを徹底していきたい。
最後は、市民のみなさまに信頼をしていただける組織をつくるためにも、情報公開を徹底していきたい。市民のみなさんからすると、市の中でどういう意思決定をして、どういうプロセスで政策が出てきたのか、この政策がどんな意味があるのか、(わかりにくい)というところで、信頼感が失われているところも多々ある。市役所の移転問題もそうだと思っている。私も先頭に立って情報発信をしていきたいと思っているが、職員のみなさまも積極的に情報開示の姿勢を持っていただきたい。
5つの公約の柱
記者会見では、改めて公約について、次のように説明した。
選挙で訴えた5つの政策の柱の1つ目は行政・財政。争点となっている市役所の移転、松戸市立総合医療センターの経営再建、クリーンセンターなど必要なインフラの整備。
2つ目は防災・減災、治安の維持。避難所の整備、冠水スポットの排水機能の強化、防犯カメラの増設。
3つ目は子育て世代の負担軽減。体験格差という言葉もあるが、習い事の支援もしていきたい。
4つ目は福祉的な政策。老若男女ワクワクイキイキと松戸市で生活できるように、スポーツ施設を整備。高齢者の独居化、孤独死の問題もあるので、高齢者が外に行きたいような環境整備を進めていきたい。
5つ目は経済。北千葉道路の整備が進んでくるので、その周辺地域の開発を千葉県や市川市と連携をしながら進めていきたい。プロスポーツチームの誘致など松戸市にとって魅力のあるコンテンツを持ってきたい。
総合医療センター再建・市庁舎の建て替え問題
記者の質問は、市立総合医療センターの財政再建と、移転か現地建て替えで揺れる市庁舎の建て替え問題に集中。
松戸市長は次のように答えた。
最初に取り組む政策は、松戸市立総合医療センターの経営再建。東葛北部医療圏における中核病院として、松戸市だけではなくて近隣の柏、我孫子、野田、流山市にとっても重要な医療拠点。大きな赤字が予想される中で、まだ名称は決まっていないが、一刻も早くプロジェクトチーム、再生チームを立ち上げたい。
安易な民営化は考えていない。しっかりと公立病院として守っていかなくてはならない。
使用者の半分程度が松戸市民。それ以外の半分が柏など周辺の市の方が使われている。松戸市だけの病院ではなくて東葛地域の病院であるので、県や近隣自治体に対して資金面の支援のお願い、要請をしていきたい。
市庁舎の建て替えについて、一刻も早くチームの立ち上げや、計画の策定など目に見える形で、市民のみなさんに発信していきたい。改めて、移転なのか、現地建て替えなのか、どれだけコストがかかるのかということを、随時発信していけるような形で進めたい。選挙中、白紙撤回と申し上げたが、白紙撤回だからと言って何もないわけではない。片方は移転、片方は現地建て替えという2つの大きなストーリーがあると思うが、一番混乱を生んでいるのは、移転をした場合どれくらいコストがかかるのか、現地建て替えは難しいのか、どういうハードルがあって、どれくらいコストがかかるのかといったことが、ブラックボックスというか、関心を持っている市民の方々にも、知られていない。もっとオープンにして、市民の皆様の議論、検討というものも考えていきたい。耐震化の問題もある。前の計画だと移転をするのに数年かかって、その間はこのまま、という状況だった。市民の命、職員の命をあずかっていて、いつ地震が来るか分からないという状況でもあるので、仮の庁舎、避難場所も含めて同時並行で考えていかなくてはならない。
本郷谷市政で検討されていた岩瀬の新拠点ゾーンに市立図書館や市民会館が入る複合施設的なものを作るという件については、いろいろなアイデアをいただいている。前向きに検討していきたい。
いずれの問題も、9月議会には、一定の方向性を示したい、という。