日曜日に観たい この1本
マイ・ブロークン・マリコ

 原作は平庫ワカの同名漫画。2019年に無料WEBコミック誌に連載され、話題となり、単行本化。2021年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した。この作品が著者のデビュー作だという。単行本1巻で完結という短い作品。映画のほうも85分とコンパクトにまとめられている。ストーリーはほぼ原作通り。原作と同じセリフも多く、原作を大切に脚本が書かれたという印象がある。
 ブラック企業で営業をしているシイノトモヨ(永野芽郁)は外回りの途中でラーメンをすすっていたが、テレビのニュースで、幼馴染で親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したことを知る。まさか、と思い連絡を取るが、ラインも電話も通じない。今からでもマリコのためにできることはないか。自問自答したシイノはマリコの遺骨を父親のもとから奪い取ることを思いつく。幼い頃に母親が出て行ったため、マリコは父親と二人暮らしだったが、この父親が最低、最悪で、マリコは暴力を振るわれ、生傷が絶えなかった。マリコの人生を無茶苦茶にした父親のもとに遺骨があっては、マリコが浮かばれない。
 オープニングからマリコの遺骨を奪取するまでは怒涛の展開。遺骨とともに旅をする後半はロードムービーのようになっていく。マリコの遺骨を奪ったシイノは川を渡って逃げるが、このシーンが遠望されていて、まるでシイノがマリコの遺骨とともに三途の川を渡っているように見える。
 マリコが生前「まりがおか岬」というところに行きたがっていたことを思い出したシイノは、深夜バスとローカル線を乗り継いで、海を目指す。リュックの中には、マリコが子どもの頃からシイノ宛に書いた多くの手紙を入れた缶が入っている。
 手紙を読みながら、小学生から今までの様々な思い出がよみがえる。それは、マリコと対話しながらの二人旅のようだ。
 シイノも家庭にはあまり恵まれなかったようで、子どものころからタバコを吸い、やさぐれている。そんなシイノにとってもマリコはかけがえのない大切な存在だった。
 ただ、残された者には、どうして何も言わずに逝ってしまったのか、という故人への想いが募り続ける。
 旅先でシイノはマキオ(窪田正孝)という青年に出会う。たたずまいがどこか厭世的で、多くは聞かずに、そっとシイノを助けてくれる。彼の存在がなかなかいいな、と思った。【戸田 照朗】
 監督=タナダユキ/脚本=向井康介、タナダユキ/出演=永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊/2022年、日本
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 『マイ・ブロークン・マリコ』、ブルーレイ&DVD好評発売中、5720円(税込)、発売元=株式会社ハピネットファントム・スタジオ、販売元=株式会社ハピネット・メディアマーケティング

©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会

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