チューニング 2020年11月22日

 前号のこの欄で、「紙敷の語源は平安時代の終わりに大暴れした平将門の上屋敷という言い伝えがある」と書いたが、平将門の乱は平安中期(935~939年)の出来事だった。勢いで「終わり」と書いてしまったのは、平安時代=貴族の時代を武士が実力で終わらせた、というイメージがあったからだ▼考えてみれば、平安時代の終わりに起きたのは源平の合戦だった。武家で初めて政権の中枢についた平清盛でさえ、貴族っぽく出世した。1167年に太政大臣になっている。武士が武士による武士のための政権をつくるのは、源頼朝の鎌倉幕府創設(1192年。最近は1185年とする説も)まで待たなければならない▼平将門の乱から実に250年以上後のことである。794年の桓武天皇による平安京遷都から始まる平安時代は約400年も続いた。260年続いた江戸時代をはるかに上回る▼100年続いた戦国時代の中で生まれた人々の中には、一度も平和な時代を経験することなく死んでいった人も多いだろう。同じ時代が400年も続くとはどんな気分だろうか。「この時代は永遠に続く」と感じたのではないだろうか。それは、平将門も清盛も同じだったように思う▼刹那(せつな)を生きる人間に時代を見通すことは難しい。

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