松戸市立夜間中学校
第1期募集に20人応募
10月から第2期募集開始

 来春4月に開校予定の松戸市立第一中学校みらい分校(松戸市立夜間中学校)の第1期の募集が8月31日に終わり、約20人から応募があったという。市教育委員会では10月から第2期の募集を開始する。8月25、26日には森のホール21会議室で夜間中学増設運動全国交流集会が開かれた。担当課の教育企画課がみらい分校の概要と準備状況を「パートナー講座(出前)」という形で説明し、参加者からは疑問やアドバイス、激励の言葉などが贈られた。【戸田 照朗】

 

松戸で増設運動全国交流集会

夜間中学増設運動全国交流集会で説明する市の担当者

 2016年12月に成立した教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)施行後初となる公立夜間中学校の開設とあって、松戸市は関係者からも高い関心を寄せられており、今年の全国交流集会は松戸市で開かれることになった。来年は松戸市と同じく公立夜間中学を開設する川口市での開催が検討されているという。千葉県では市川市大洲中学に次いで2校目、埼玉県では初の開設となる。全国では8都府県25市区に31校がある。
 第1期の応募者は20人程だったが、昨年度、市が市内46か所の公共施設にアンケートハガキ付きポスターを置いた郵送での調査やウェブを使っての調査では夜間中学に通ってみたいという人が市内で58人いた。今後も広報と入学希望者の掘り起こしに努めていくという。また、来年1月に夜間中学についての講演会、2月に入学説明会を予定している。
 市が説明したみらい分校の概要(下掲参照)について、入学資格の①義務教育の年齢(満15歳)を超えた人、④みらい分校の生活に支障のない人、という項目についてはいくつかの疑問や質問が出された。
 流山市から参加した自分の娘が不登校だという母親は、「満15歳を超えた人」という制限は外して欲しいという。市の担当者の回答は「適応指導教室も開いており、不登校の生徒はこちらで対応している」というものだったが、この母親の娘は適応指導教室にも通えなかったという。
 また東大阪市で夜間中学の教員をしていたという女性は、入学資格の4つ目(みらい分校の生活に支障のない人)は非常に気になる、という。「ずっと不登校を続け、引きこもりという状態になっている人は、これを読んでどう感じるだろうか。私が行っていいのかな。支障をきたさないのかな、という思いになるのではないか。松戸の自主夜間中学も見学したが、なぜあれだけ多くの人が集まってくるのか。一人ひとりの気持ちに合わせた対応をされているからこそ、長年にわたり自主夜間中学が運営されてきたと思います。公立であるということで、非常に難しいと思うが、その点を踏まえてやってほしい」と話した。この点について市の担当者は「『支障がない方』というのは、午前に勤務される方というのもいらっしゃって、午後5時25分に開始し、夜間に週5日来ていただくという想定です」と回答。会場からは「『夜間の時間に通える方』とか、表現を変えたほうがいい」といった声が聞かれた。

あいさつする「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」の榎本博次代表

 この他にも「市川市(大洲中学)は職員が3人になってしまった。5~6人の職員は必要だと思う」「養護教員やカウンセラーも配置してほしい」といった教員の配置についての意見や要望、「京都では最長6年間通える。3年間で限らず考えてみては」といった年限についての意見も聞かれた。
 松戸自主夜間中学を35年間運営してきた「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会(以下、市民の会)」の榎本博次代表は、入学資格の内容などについて、市教委と話し合いの機会を設けるという。

 

「苦戦」「前向き」全国の状況

 同集会では全国各地の開設運動の状況も報告された。
 全国の80を超える自治体で公立夜間中学開設を検討しているというが、苦戦しているところも多い。
 大分市では行政が「おおいたナイトスクール」という夜間講座を開き、中学校程度の学習の学び直しの場を提供している。同市のホームページによると、市内の3か所で、英語、数学、国語を中心に6月から2月まで、約30回の講座が開かれる。
 北海道と札幌市、高知県は設置に前向き。
 仙台市では、自主夜間中学を昨年4月から市教委との共催で運営している。
 松戸市の市民の会、「埼玉に夜間中学を作る会」や川口自主夜間中学とも以前から交流がある「江東区に夜間中学をつくる会」は1981年5月に結成し、自主夜間中学を運営している。東京都夜間中学校研究会の調べでは、1973年から2015年の間に1250人が江東区から都内の中学校夜間学級(夜間中学)に在籍した。同会では江東区教育委員会に区内に公立夜間中学を開設する必要性を訴えてきたが、実現の目処は立っていない。
 また、2009年4月には松戸自主夜間中学の働きかけで生徒とスタッフが集い、柏自主夜間中学も開設。木曜は教育福祉会館と中央公民館で午後6時から8時45分まで、土曜はあいネット分室で午後2時から4時45分まで開かれている。生徒は10代から70代まで30人程、スタッフも20代から70代まで30人程が通っている。

 

第一中学みらい分校の概要

夜間中学の校舎となる旧古ヶ崎南小学校

 入学資格は①義務教育の年齢(満15歳)を超えた人、②松戸市内在住の人。市外(千葉県内)の人は住んでいる市町村教育委員会の副申が必要、③中学校を卒業していない人、または、卒業していても不登校等の理由により、学び直しを希望する人、④みらい分校の生活に支障のない人。
 授業は年間およそ200日、週5日。中学校の教科を勉強する。教員免許を持っている先生が教える。しっかり勉強すれば、卒業証書をもらうことができる。授業料は無料。
 午後5時20分から学級活動。途中休憩を挟んで40分授業で4時間目までが行われる。8時40分から45分まで清掃と学級活動が行われ、下校となる。
 英語・国語・数学・理科・社会の基本の5教科を中心に体育や美術、音楽などの授業が行われるが、昼間の中学校に比べると時間数が少ない教科が出てくる。また、部活動は行われず、学校行事については今のところ未定だという。
 校舎となる旧古ヶ崎南小は、京成バス古ヶ崎1丁目停留所から徒歩2分。1階が「ふれあい学級」(松戸市適応指導教室)として使われている。夜間中学は2階を改装し、1~3年までの各1クラスと音楽などを行う教室と職員室ができる。教員の人数については県と交渉中だという。
 問い合わせは、☎366・7455松戸市教育委員会教育企画課、夜間中学生徒募集担当まで。

 

 

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