松戸の地名の由来⑤

 地名はその土地の歴史と深く関係している。地名の由来を知ることは、地域の歴史を知ることでもある。あなたの街の地名にはどんな由来があるだろうか。

 

根本・小根本・中根(ねもと・こねもと・なかね)

弘法大師の伝説が残る金山神社

 弘法大師がこの地を訪れ、1本の樹木で3体の薬師如来像を彫られた。根本の金山神社の上のところに「かくれざとう」というところがあった。ここにこもって弘法大師が薬師如来を刻んだという。
 このうち最も根に近い部分で彫られた像が吉祥寺の本尊となり、中間の部分で彫られた像が東照院の本尊となり、最も末の部分で彫った像が印西市浦部の観喜院薬師堂の本尊となったという。
 このことから吉祥寺がある地が根本村、東照院のある地が中根村、観喜院薬師堂のある地が浦部村と呼ばれるようになった。「浦」は「末」という意味に考えるのだろう。
 東照院は伊久山東照院と称して中根村にあったが、いつのころか馬橋村に移転して、寛永年中に東照院を中根寺と改めたという。
 以上は伝説だが、「角川日本地名大辞典」には、小根本は隣接する根本と同様に、中世城郭の根古屋集落に由来する、とある。「小」は近世初期に根本と分離した際、混乱を避けるためにつけられたという。

 

初富飛地(はつとみとびち)

初富飛地にある「かぶと公園」

 初富(鎌ヶ谷市)の開墾を担当した3人のうちの1人、東京麹町呉服問屋加太八兵衛の出資金に見合う土地が初富になかったので、松戸市内の牧地を初富分の飛地として開墾会社が割り当てたことに始まる。この地が俗称「かぶと」と呼ばれるのはこのためである。

 

八ヶ崎(はちがさき)

 北西方向への幸谷・二ツ木谷津の谷頭と南西方向への長津川谷津の谷頭によって、台地西側が複雑に屈曲変化する地で、地名はその地形による。
 「松戸の寺 松戸の町名の由来 松戸の昔ばなし」(松戸新聞社)には、土地の古老の話として「丁度海原に七重八重とつき出た岬の様な観があったところから呼称されるようになったのだ」という話が載っている。

 

松戸(まつど)

 千葉県の通称でもある「房総」は古代は「総(ふさ)」と呼ばれていた。総は麻の意味で、麻がよく採れたからだという。大化の改新(646年)後、総は「上総」と「下総」に分けられた。松戸は下総国葛飾郡(かつしかのこおり)にあったが、度毛、八島、新居、桑原、栗原、豊嶋、余戸、駅家の8郷のうち、どの郷にあったかは分かっていない。しかし、駅家郷(うまやこおり)が松戸であるとの説が多い。下総国府のあった国府台に近く、太日河(今の江戸川)の渡船場があった松戸は交通の要衝で、藤原時平選集の「延喜式」にある「井上(いのかみ)駅」や「茜津(あかねつ)駅」が松戸ではなかったかといわれる。特に、「茜津」は「馬津」の読み誤りで、「まつど」は「馬津」や「馬津郷」が「まつさと」となり、やがて「まつど」となったといわれている。
 平安時代に書かれた『更級日記』には、「太日川というが上の瀬、まつさとの渡りの津に泊まりて夜一夜、船にてかつがつ物など渡す」という一文が出てくる。「まつさと」というのが、松戸のことで、松戸の地名が表れた最も古い文章としても知られる。
 『更級日記』は菅原孝標女(すがわらたかすえのむすめ)が、50歳を過ぎてから約40年間を回想して書いたもの。上総の国の国府に赴任していた父菅原孝標が、治安元年(1021)京都に帰国することになり、13歳の娘が父について帰国する様子から書き始めている。この文章はその道中、太日川を松戸あたりから渡った様子が書かれている。

 

南花島(みなみはなしま)

 花島とも称した。「花島」は、突出台地を西側低地から望見すると島の端のごとく見えることによるといい、「南」は郡内同地名と区別するために冠されたものという。

 

稔台(みのりだい)

 みのり台駅南側に陸軍工兵学校の八柱演習場があった。戦後、除隊したばかりの男61人が入植し「八柱帰農組合」を作った。入植者の公募で、たくさんの食べ物がみのるように祈りを込めて「稔台」と命名し、「稔台農事組合」と改めたという。

 

三村新田(みむらしんでん)

 新田3か村が再編成されて1か村になったことによるという。

 

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 ※参考文献=「あきら」(グループ モモ企画、足利谷久子編集)、「角川日本地名大辞典」、「松戸の歴史散歩」(千野原靖方・たけしま出版)、「ふるさと常盤平」(常盤平団地自治会編集、常盤平団地30周年記念事業実行委員会発行)、「松戸の寺 松戸の町名の由来 松戸の昔はなし」(松戸新聞社)、「松戸史余録」(上野顕義)、「改訂新版 松戸の歴史案内」(松下邦夫・郷土史出版)、「江戸川ライン歴史散歩」、「二十世紀が丘区画整理誌」(都市部開発課編集・松戸市発行)、「新京成電鉄沿線ガイド」(竹島盤編著・崙書房)、「わがまち新生への歩み」(松戸市六実高柳土地区画整理組合)、「日本城郭体系第6巻」(松下邦夫・新人物往来社)

 

 

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