日曜日に観たい この1本
街の上で

 下北沢を舞台にした作品で、ある意味下北沢という街自体が主役だと感じた。
 主人公の荒川青(あお)が食事に訪れた喫茶店。聖地巡礼なのか漫画の本を手に、店員に名所を訪ねる女性客。それならバイト終わりに案内してあげると、ふたりは連れ立って店を出ていった。都会だけれどどこか温かい。いい街だと思う。
 物語は青が恋人の川瀬雪に別れを告げられるところから始まる。他に好きな人ができたという。二人は雪の誕生日ケーキを囲んでいる。青は彼女の誕生日に振られたのだ。
 納得がいかない青は雪への未練を隠さない。雪とのことも知っている行きつけのバーのマスターにもたしなめられる。ここのマスターとの距離感も街の風景だなと思う。
 青は古着屋で働いている。店番をする時、いつも本を読んでいる。行きつけの古本屋の店員・田辺冬子に変なことを言ってしまい、後悔する青。古本屋の主人は最近亡くなったようだ。淡々とした中に漂う死の匂い。
 青が働く古着屋に芸大生の高橋町子が訪ねてきて、卒業制作の映画に出演して欲しいと言う。迷った挙句出演したこの映画撮影で、青は映画スタッフの城定イハと親しくなる。
 川瀬雪を演じる穂志もえか、田辺冬子を演じる古川琴音(ことね)、高橋町子を演じる萩原みのり、城定イハを演じる中田青渚(せいな)が魅力的に描かれている。
 青は雪に未練を残しながらも、出会った女性たちにも魅力を感じているように見える。  この微妙な空気感がこの作品の肝のように思える。
 荒川青を演じる若葉竜也(りゅうや)は今泉力哉監督の「愛がなんだ」にも出演していた。同作で主演を務めた成田凌が友情出演しているが、友情出演のわりに重要な役を演じている。
 大きな出来事が起こるわけではないが、これはコメディなのかと思えるような笑えるシーンもある。なにより、「そういえば、自分にも昔似たようなことがあった気がする」と思える空気感が、観ていて心地いい作品だった。
【戸田 照朗】
 監督=今泉力哉/出演=若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚、成田凌/2019年、日本
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 「街の上で」、ブルーレイ税込6380円、DVD税込5280円、発売中、発売・販売元=アミューズソフト

©『街の上で』フィルムパートナーズ

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