「学び直しの場」で人生の新たな1ページ
市立夜間中学みらい分校が開校

 松戸市立第一中学校みらい分校(夜間中学)の開校式と入学式が16日午後5時45分から、校舎となる旧古ヶ崎南小学校体育館で行われた。全国には31校の公立夜間中学があるが、平成では最初にして最後の夜間中学の開校となった。千葉県内では市川市立大洲中学校夜間学級に次いで2校目。また同日には、埼玉県では初の夜間中学となる川口市立芝西中学校陽春分校も入学式を迎えた。【戸田 照朗】

様々な国籍、年齢の22人が入学

久保木校長(中央)と生徒たち。左端が岩間さん

 入学生は1年生13人、2年生5人、3年生4人の計22人。国籍は日本が13人、中国3人、ブラジル2人、カンボジア、フィリピン、アルゼンチン、ネパールが各1人。年齢は10代から70代までと幅広い。義務教育未修了者は3人。県内他市町村在住者は1人。
 日課は午後5時20分から8時45分まで40分授業が4コマと、学級活動・清掃などが行われる。音楽、美術、技術家庭、体育などの教科は全員で受けるが、そのほかの教科については、入学後、面談を通して、学習内容別に「ベーシック」「ミドル」「チャレンジ」の3つのコースのほかに、日本語に不安のある人を対象にした「スタートコース」の4コースに分けられる。
 教員は校長・教頭と教務主任、各学年の担任・副担任、合わせて10人。ほかに非常勤職員が4人、用務員が1人。伊藤純一教育長は「全員希望して来てくれた。大変うれしいこと」と話していた。
 開校式・入学式で久保木晃一校長は高村光太郎の「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる」という言葉を引用しながら、「これから教職員とともに新たな、みらい分校という道を作り、これから入ってくるであろう後に続く生徒たちのためにも熱心に学業に励んでいただきたいと思っております。それぞれが持っている、みらい分校で学ぶ目的を忘れないでください。ここにいらっしゃるみなさんは、年齢も、これまでの経験もみな違います。自分とは異なるほかの人の生き方や考え方に触れる中でご自分の人生をより豊かにしてほしいと思います。教職員とみなさんの力を合わせて、新たな道を作っていきましょう」とあいさつした。
 22人の入学生を代表して誓いの言葉を述べた西チヨカさん(49・1年)は、ブラジルに生まれ、中学校時代は欠席も多く、中学で履修すべき学習内容を身につけずに卒業した。生活に追われるままに歳を重ね、21歳で来日。同じ日系ブラジル人の夫と結婚し、子どもにも恵まれた。日本人と変わらぬ生活を送ってきたが、我が子が学校生活を通して様々な経験をし、成長していく様子を見るにつけ、自分ももう一度学校生活をやり直してみたいと強く願うようになった。しかし、それはかなわぬ夢だとあきらめていたところへ、地元の松戸市に夜間中学が開校するという信じられない朗報が届いた。「今度こそ、この学び舎でたくさんのことを吸収し、年齢も様々な学ぶ仲間と一緒に、人生の新たな1ページを築いていきたいと思います。私たちに学び直す場を作ってくださった、たくさんの方々に心から感謝し、その期待に応えられるよう、頑張っていきたい」と力強く話した。
 通信制高校に通う岩間雄大さん(17)は、みらい分校とのダブルスクール。高校も夜間中学も同時に3年生になる。中学時代、いじめにあったわけではないが、人間関係の悩みから、不登校、引きこもりの期間が長かった。まともに授業を受けられなかったという悔いがあるという。将来は、あん摩マッサージ指圧師の資格を取って整体師になりたいという夢がある。「クラスの雰囲気もすごく明るいし、教員の方も優しいので、大丈夫かなと思う。年齢や国籍の違う人たちと学ぶという経験は人生でもあまりないと思うので、いろいろ話して、学んでいけたら。一番は人間関係を学びたい。教科では英語や国語を重点的にやりたい」と話していた。
 1983年から松戸市に公立夜間中学校設立を訴えてきた「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」の榎本博次代表は、「36年間運動してきて、開校に至ったわけですから、率直に喜びたい。今後は学びたいという人たちに寄り添った運営をしていただきたい」と話した。同会では、公立夜間中学校の開設運動と同時に「松戸自主夜間中学」を運営してきた。勤労会館で火曜の午後6時から9時までと、金曜の午後3時から9時まで開講している。柏にもスタッフが開設に関わった姉妹校の「柏自主夜間中学」がある。
 今回、公立の夜間中学が開校したわけだが、自主夜間中学も今まで通り、運営を続けていくという。

入学式で紹介される松戸市立第一中学校みらい分校の職員

 みらい分校には松戸自主夜中から2人が入学した。入学を希望しながらも、「まだ準備ができていない」という理由で、今回は入学を見送った人もいる。
みらい分校は、文科省の学習指導要領に沿って、週5日通う必要がある。週5日は通えないが、週2日なら通えるとして、自主夜中を選択する人もいる。
 榎本代表は、「同じ夜間に開講しているわけですから、自主夜中のスタッフが、みらい分校の学習支援をするということも考えられる。なんらかの形で交流を持てたら。また、千葉市など県内で公立夜間中学開設の要望がある地域の支援もしていきたい」と話していた。
 問い合わせは☎047・312・2031松戸一中みらい分校。

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