高齢者にもペットとの暮らしを
常設里親募集会場「ペットと暮らそう」

 常盤平陣屋前にある一般社団法人動物共生推進事業は、柏駅の近く(柏市泉町16-30)で「ペットと暮らそう」という常設里親募集会場を運営している。ここにいる犬猫は柏市動物愛護センターや茨城県動物愛護センターから保護した犬猫や、ブリーダーから引き取った犬猫、一般の人が飼えなくなった犬猫で、新しい里親(飼い主)との出会いの場を提供している。【戸田 照朗】

 

愛護センター、ブリーダーから保護

 

代表の三本美栄さん(右)とスタッフの齋藤夢乃さん

 環境省のホームページによると、平成29年度、全国の動物愛護センター(保健所)で殺処分された犬猫は4万3227頭(犬8362頭。猫3万4865頭)。自治体が運営する動物愛護センターでも犬猫の里親探しに力を入れており、昨年度引き取られた10万631頭のうち4万4212頭が譲渡され、1万2602頭が返還された。昭和49年度(1974)には約122万頭が殺処分されていた。引取り数と殺処分数は右肩下がりで、譲渡数は右肩上がりという状況が続いている。特にここ10年の変化が大きく、平成19年度に初めて殺処分率が90%を切り、昨年度は43%だった。
 柏市は中核都市であるため、独自の動物愛護センターを運営している。松戸市は千葉県動物愛護センターの管轄になる。富里市に本所、高柳に東葛飾支所がある。ホームページを検索すると、里親募集中の犬猫の情報や譲渡会の日程などがわかる。
 ブリーダーから保護する犬は、5~6歳になり、繁殖力が落ちて飼い殺し状態になっていたり、ブリーダーが高齢のため事業をやめてしまったといった例があるという。
 一般の人の多頭飼育による飼育崩壊の現場から犬猫を保護する場合もある。また、春には子猫を保護したという電話が毎日のように入る。夜のうちに施設の前に子猫を捨てられたことも。施設は交通量の多い交差点にあるため、非常に危険だ。
 ブリーダーから保護した犬猫が60%と一番多く、次いで動物愛護センターから25%、一般から10%程度を保護しているという。

 

動物病院の一事業としてスタート
「もしもの時」は再び引取り、保護

 

「ペットと暮らそう」は動物病院に併設している

 同社団法人は、ファミリー動物病院(流山市鰭ヶ崎)、新松戸ファミリー動物病院、アニファ動物病院(松戸病院、五香病院、柏病院など5院)、犬のしつけ教室、トリミングサロン、ドッグカフェなどを運営する株式会社ファニメディックの動物愛護事業としてスタートし、3年前に一般社団法人として独立した。3年間で300頭以上の犬猫が里親のもとに引き取られた。運営費はサポート会員の会費(入会金1500円、年会費5000円)と寄付など。まだ会員が100人程度で体力がないため、運営には同社の援助も受けているという。
 常設里親会場「ペットと暮らそう」はアニファ動物病院柏病院に併設しており、保護した犬猫の健康管理も同院が行っている。同院は年中無休のため、「ペットと暮らそう」も毎日開いている。里親を希望する人と保護された犬猫が毎日ふれあうことができる。
 多くの動物愛護団体が「犬猫の殺処分ゼロ」を目指している。同社団法人も殺処分ゼロを目指す気持ちは同じだが、何より大切にしているのは「ペットと人が共に楽しく暮らせる社会をつくる」ことだという。そこで、高齢者向けペット支援事業に力を入れていることが大きな特徴だ。
 高齢者が里親を希望しても動物愛護団体は譲渡しないことが少なくない。子犬子猫は20年近く生きる。里親が犬猫を最期までみることができない可能性があるからだ。老犬老猫になれば、様々な病気が出てきて医療費もかかる。しかし、同社団法人では常設の施設を持ち、動物病院の支援も受けているため、高齢者が飼えなくなった場合は、再び引き取り、新たな里親を探すことを約束して、積極的に里親になってもらっているという(高齢者ではなくても、何かの理由で飼えなくなった場合は、再び引取り、新しい里親を探すという)。
 同社でトリマーとして働き、同社団法人の代表を務める三本美栄さんは、「仕事をしている時に、本当はペットを飼いたいけれど、高齢になったのであきらめているという方に多く出会いました。そんな時、サポートをできる施設があれば、と思っていました。高齢者はワンちゃんと過ごす時間が多く持てるし、散歩で外に出て飼い主同士の会話も増える。高齢者にこそペットは必要なのでは、と思います。譲渡前や後に里親さんのアフターフォローとして、動物病院の先生(動物行動学のプロ)の力を借りて『保護犬猫たちと幸せに暮らす方法』のセミナー開催を無料で行い、保護犬猫を迎える際に不安なことや、飼い始めたあとに生じたトラブルや心配事などを気軽にご相談できる窓口を作っています。譲渡をしたあとも里親さんやペットのサポートをしていきたいと考えています」と話していた。
 同社団法人では、このほかに3日に行われた「江戸川カッパ市」などのイベント会場で啓蒙活動や里親探し、子どもと動物のふれあい事業を行っている。また、「ペットと暮らそう」は猫の保護と里親探しをしている「松ねこ」など、ほかの動物愛護団体の譲渡会の会場として無償提供されている。
 問い合わせは、☎047・712・2811、一般社団法人動物共生推進事業まで。

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