本土寺の貴重な寺宝などを展示
企画展「本土寺と戦国の社会」
11月12日まで松戸市立博物館で開催中

日蓮聖人曼荼羅本尊
(日本第3位の大きさ)(本土寺蔵)

 企画展「本土寺と戦国の社会」が11月12日まで松戸市立博物館で開催されている。
 松戸の鎌倉~戦国時代を語る上で、小金城主高城氏と本土寺は欠かせない存在だ。同展では本土寺が全面的に協力し、日蓮以来の数々の寺宝を展示するだけでなく、本土寺を出発点にして茨城から京都まで、各地の貴重な資料を借り、宗教・芸能・戦争のあり方など、戦国時代の意外な実態を紹介している。
【展示の内容・構成とポイント】
 ①「門外不出の寺宝展」
 書状や絵、曼荼羅本尊など日蓮聖人ゆかりの品々を始めとして、歴代住職の遺品など、普段は決して見られない貴重な寺宝の数々を展示。
 ②「みんな知らない、戦国時代の本土寺」
 全日蓮宗寺院の和解に、本土寺が大活躍したことが、最近わかったという。いまの東金市で、本土寺と武士が衝突した事件

縫箔 黒茶片身替鉄線 唐草薄扇散模様(能衣装)(東京国立博物館蔵)

が、すべての始まり。危機をチャンスに転じた住職のエピソード

も交えて、本土寺経由の戦国時代を語る。三好長慶・松永久秀ら有名人の書状や、近年発掘調査された有力信者原氏の城の資料も展示している。
 ③「過去帳からみる戦国時代」
 本土寺過去帳は、日本一有名な過去帳で、大きな図書館なら誰でも手に取れる古記録だ。そこには人気芸能人だった猿楽能の役者や、戦国時代に大きく発達した鍛冶屋の名前も記されている。本土寺と縁を持った職能民の姿を、当時の美しい能衣装、鎧・兜、何種類もの槍や火縄銃などを通して紹介している。また、彼らのような多くの人々と物資が行き来した場所として、町場の遺跡の出土資料も展示している。

千葉胤富書状(松戸襲撃事件)(市立博物館蔵)

 ④「大動乱と小さな襲撃事件」
 博物館所蔵の千葉家当主の手紙と、昨年購入した西原文書を出発点に、織田信長・徳川家康・武田信玄・上杉謙信・北条氏康ら列島の半分を巻き込んだ動乱の最中、松戸で起こったある事件を掘り下げる。本土寺過去帳からは、常に戦死の危険と隣合わせだった日常が、松戸の事件からは、目の前の敵を倒す以外の戦い方もあった事実が浮かび上がる。
【主な展示資料】

火縄銃(日本最古かも)
(長浜市立長浜城歴史博物館蔵)

 ①日蓮の画像/日蓮が仏教世界を表現した自筆の曼荼羅本尊(日本で3番目に大きいもの他)/日蓮自筆の手紙/歴代住職が日蓮の筆使いに似せて作った曼荼羅本尊/日蓮の熱心な信者で支援者だった矢木氏にかかわる鏡、短刀、鋏、皿など。

 ②戦国時代に収集された日蓮の書状や論文の写し/法事で使う金無垢の皿/歴代住職の曼荼羅本尊/京都を支配した三好長慶や松永久秀の手紙/原氏や高城氏、上杉謙信などから本土寺へ出された文書/戦国時代の熱心な信者だった原氏の本拠地・小西城(大網白里市)で近年発見された陶磁器や供養塔/戦国時代の住職日瑞の板碑(中世の供養碑。新発見)。
 ③色鮮やかな安土桃山時代の能衣装/能の絵画/十文字槍/日本最古かもしれない火縄銃/長篠合戦図屏風/戦国時代に大量生産されるようになった簡便な鎧/足軽が着た簡素な鎧/曼荼羅本尊が描かれた陣羽織/柏市中馬場遺跡の出土資料。
 ④小田原の大大名・北条氏康の国府台合戦4日前の徴兵命令書/滅びゆく名門今川氏真が援軍に与えた恩賞の確約書/史上もっとも早い時期に「天下布武」の朱印が押された織田信長の文書/下総国の防衛が手薄になったことがわかる足利義氏や北条氏政の手紙/松戸が襲撃されたことを記す千葉家当主からの連絡文/戦国時代の領主と村の関係がわかる西原文書の数々/戦乱の終結を象徴する徳川家康から本土寺に出された朱印状。
【関連事業】 ★10月22日午後1時から担当学芸員・中山文人氏の講演会「本土寺と戦国の社会」。先着順。★11月11日午後1時から馬の博物館学芸部長・長塚孝氏の講演会「戦国社会の実像」。往復ハガキ(1人1枚)に住所・氏名(ふりがな)・電話番号を明記して、〒270-2252千駄堀671、松戸市立博物館「11月11日歴史を語る(3)」係へ。26日必着。抽選。★展示解説会を10月29日、11月12日の午後2時より45分程度開催。
 午前9時30分~午後5時(入場は4時30分まで)。一般300円、高大生150円、小中学生無料。月曜休館。☎384・8181。

長篠合戦図屏風(鉄砲3段撃ちはフィクション?)(長浜市立長浜城歴史博物館蔵)

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