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Good Coice 〜新聞掲載の逸品〜

和菓子 山陰・山陽 広島県

鯨羊羹
中屋本舗

もっちり 切り口の美

広島県尾道市の和菓子「中屋本舗」(1936年創業)の「鯨羊羹」は、白い道明寺と黒い錦玉の対比が美しい。もち米が原料の道明寺はもちもちとして、重量感がある。固めた寒天を利尻昆布の粉末で染めた錦玉は漆黒で、かすかに海の香りがする。鯨肉は入っていない。

尾道水道の見える宿でこの品に出合った時、私はちょっと感動した。1切れのようかんに、海の王者の強く大きく堂々とした姿が投影されていると思った。

中屋本舗の親戚筋の和菓子店で長く作っていたものだ。専務の前田博徳さんが製法を引き継ぎ、2004年に発売した。形が崩れず、美しい切り口になるよう、道明寺粉の粘り気を抑えつつ、寒天で固めるのがコツ。完成するまでに4時間ほどかかる。

江戸時代の菓子見本帳に蒸しようかん「鯨もち」の名があるという。だが捕鯨の地ではない尾道にどうして伝わったのか、理由はよくわからない。姿は違うが、鯨餅や鯨羊羹という名の菓子は金沢や大阪にもあるので、北前船と関わりがあったのではないかと想像するだけだ。

和菓子屋の2代目にあたる前田さんは、店を継ぐのが嫌で東京の理工系の大学に進んだ。だが3年生の時、突然、和菓子が作りたくなり、卒業後、京都の和菓子店で修業をして店に戻った。

「店に戻って40年余りたちましたが、知れば知るほど和菓子の世界は奥深い。細く長く、求めていきたい」と語る。

2019年7月20日 読売新聞 甘味主義より

中屋本舗ショップ http://www.nakaya-honpo.com/cart_pro3/set.html

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