すみだ川
向じま梅鉢屋

素材生かした砂糖漬け

江戸時代後期、まだ砂糖がとても高価だったころ、野菜の砂糖漬けは珍重され、時に薬のようにも扱われていた。やがて安価な砂糖が普及すると、野菜菓子として人々に親しまれるようになった。その技術を今に伝えるのが大正時代の1915年に創業した「向じま梅鉢屋」である。

「すみだ川」の箱に整然と並べられているのは、ニンジン、ダイコン、フキ、昆布、ゴーヤ、夏ミカンの果皮など9種。甘さの中に、ニンジンの香り、ゴーヤのほろ苦さ、昆布のうまみなど、素材の個性が立ち上がってくる。シャリッとした歯触りも心地よい。すがすがしい味わいだ。

下ゆでした野菜や果皮を砂糖蜜で煮る。ごく薄い蜜から始め、沸騰した火から下ろし、そのまま冷ます。少しずつ蜜を濃くし、5日から1週間かけて甘さを含ませるのだ。いきなり濃い蜜に漬けると、野菜の中の水分が抜けしわしわになってしまうという。

材料は野菜類とグラニュー糖のみ。極めてシンプルだ。仕事場は清潔で、いくつものコンロと野菜を入れた寸胴鍋が漠然と並んでいた。

野菜は形と大きさがまちまちで、時期や産地によっても変わる。「精度何度の砂糖蜜で何時間煮るというレシピが作れないので、野菜の顔をみて判断します」と店主の丸山壮伊知さん。

最近、ホテルのバーなどでウイスキーやワインに添える新しい楽しみ方が生まれてきた。江戸から続く食文化を、次世代に伝えたいと考えている。

向じま梅鉢屋HP http://umebachiya.com/

2019年3月9日 読売新聞 甘味主義

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