桃カステラ
松翁軒

ふわふわ生地に蜜

長崎の春を飾る菓子として知られるのが「桃カステラ」だ。江戸時代の1681年(天和元年)に創業したカステラの老舗「松翁軒」の桃カステラは、桃の実の形に焼いた生地に砂糖と水あめで作った蜜をかけ、乾いてから色を差して、葉と枝の飾りを置いたものだ。

白地にほんのり差した紅色がかわいらしい。生地は精度を抑えて、ふわふわと軟らかく、普段、口にするカステラより軽やかな味わいである。熟練の職人が釜で焼き上げる製法を守っている。

カステラは16世紀に長崎へやって来たポルトガル人から伝えられたとされ、当時は素朴なものだったそうだ。研究熱心な日本の職人は工夫を重ね、長崎ならではのカステラを完成させた。

桃は中国で不老長寿の意味を持つ縁起物の果実。長崎では、毎年10月に行われる祭りの長崎くんちに、桃まんじゅうを奉納する習慣があるという。

桃カステラは、南蛮渡来のカステラに中国の影響が加わって生まれた、国際都市の長崎らしい菓子だ。大正時代にはすでに人気商品だったそうだ。現在では、ひな祭りや出産祝い、結婚式の引き出物などに幅広く用いられている。

「港町として栄えた長崎には、独自の歴史文化が花開きました。これからもカステラを通して長崎の良さを広く伝えていきたい」と社長の山口喜三さんは語る。桃カステラは3月上旬までの販売。

読売新聞 2019年2月 甘味主義

松翁軒 http://www.shooken-shop.com/fs/shooken/c/momo

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