日曜日に観たいこの1本
彼女の人生は間違いじゃない

 

 

 

 

 市役所に勤める金沢みゆき(瀧内公美)は、父親の修(光石研)と仮設住宅で暮らしている。津波が押し寄せた町で、母はいまだに行方不明。朝起きると、炊きたてのごはんを母の写真の前にお供えする。父親の修は農業をしていたが、田んぼが汚染され、耕作ができなくなった。目的を失った修はもらった保証金を毎日パチンコにつぎ込んでいる。鼻を突き合わせるような狭い食卓に会話は少ない。夕飯の時、修は酒を飲みながら母の思い出話ばかりを口にする。自分と結婚しなければ、こんなことにならなかったのではないか。修にはそんな後悔がある。無気力で前に踏み出せない修をみゆきはなじるが、修には届かない。
 「東京の英会話教室に行く」。週末になると、みゆきは、そう修に嘘をついて、いわき駅から高速バスに乗って東京に向かう。車窓から見える高圧電線の鉄塔の列も東京に続いている。東京駅のトイレで化粧をして、電車で渋谷のマンションの一室にあるデリヘルの事務所に向かう。従業員の三浦(高良健吾)の運転する車で客の待つラブホテルへ。三浦はこの仕事が好きだという。生きている感じがすると。
 みゆきと修が暮らす仮設住宅の隣には原発で汚染水を処理している夫と妻が暮らす。夫は家に帰れないほど忙しく、妻は精神が不安定になっている。
 みゆきには山本(篠原篤)という恋人がいたが、震災の時に話した一言がもとで別れてしまった。そんな山本から、また会いたいというメール。二人は止まった時間を取り戻せるのだろうか。

©2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

 そして、みゆきの同僚で広報公聴課の新田(柄本時生)の家族もバラバラになってしまった。卒論に書きたいからと、東京から来た女子大生に〝取材〟を受け、被災地の現状とこれからを聞かれるが、うまく言葉が出てこない。
 廣木隆一監督が初めて書いた同名小説の映画化。監督自身が被災地の出身で、震災直後にカメラを持って現地に入ったが、長いあいだ作品にはできなかったという。作品からは、包み隠さない被災地の今が伝わって来るようだ。
 登場人物のだれもが今も塞ぎきれない大きな穴を心の中に抱えているように感じる。
 みゆきの週末のアルバイトはどうしてなのか。お金のためではないような気がする。現実とは違う世界にしばし身を置くためなのか。高速バスでの行き帰り、車窓を眺める彼女の瞳は何を映しているのだろうか。
 作品の最後に少しだけ見える小さな光。暗闇が濃いだけに、よけいに輝いて見え、心がふるえた。
 R15指定。
【戸田 照朗】
 監督・原作=廣木隆一/出演=瀧内公美、光石研、高良健吾、篠原篤、柄本時生、蓮佛美沙子/2017年、日本
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 「彼女の人生は間違いじゃない」、DVD・ブルーレイ発売中、ギャガ株式会社

©2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

©2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

©2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

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©2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

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